「今日は5時限目と6時限目にかけて歯科検診があります。2人の養護教諭だけではできません。先生方どうか協力をお願いします。」
転勤して初めて迎える歯科検診、朝会で私が話したことです。
授業のない先生が検診会場に集まり生徒の整列や監督等をしてくれました。
多くの先生が会場に居てくれるお陰で生徒の私語がなく、7人の歯科医の声と器具の音だけが聞こえていました。
相方の養護教諭はこの状況に感動しました。
私もこの時の事は退職した今もはっきりと覚えています。
「うちの学校は授業優先だから。昨年度は誰にも協力してもらえなくて養護教諭2人で検診をすすめました。」
継続でいる養護教諭の情報でした。
1,000人近い生徒を先生方から協力を得られず動かすなんて、なんと恐ろしい学校へ転勤してしまったと思いました。
検診を進めるに当たり、教科の先生24人に個別でお願いに回りました。
相方からは、効率が悪いから昨年のように文書で依頼して要望がある人は申し出てもらえばいいと提案されました。
でも、自分が依頼される立場だったら文書でもらうより直接言葉で依頼を受けたいよなと思ったのでこのやり方を通しました。
検診の都合を聞くだけですが、一人ひとりの先生の話を聴きながら授業の大変な状況が伝わってきました。
「週始めの小テスト10分は必ずやらないと次の授業に進めない」
「同じ曜日が行事や祭日でつぶれているから授業が他のクラスより遅れている」
「実験をやってしまいたい」
どの先生も自分の大変な状況を話すのですが、最後は「養護教諭も大変だよね」と言葉をかけてくれました。
検診の順番を考え何度も教科担任に確認して予定表を完成しました。
そして感動的な検診へと繋がりました。
『人を動かす』D・カーネギーの本にこんなことが書かれていました。
人の身になって考える。
他人に物を頼もうとする時には相手の立場から物事をよく考えてみる。
この本を読むとあの時の感動がよみがえります。